本の紹介『うたのしくみ 増補完全版』 細馬宏通

ユーミンの名曲「やさしさに包まれたなら」の冒頭を思い出してみてください。「小さい頃は神様がいて」という歌いだし、ひらがなで書くと「ちー、いっさーい」となりますが、この「い」と「さ」の間の「っ」は、実は無音ではないそうです。

著書で人間行動学者の細馬宏通さんによると、この「っ」には「S」の音が忍ばせてあるとのこと。
「優しい気持ちで目覚めた朝は」は、「やー『っさ』『っし』ーい」。
細馬さんはこれを、「ことばがことばの音になる前」と表現しています。

歌のクライマックスである「やさしさに包まれたなら きっと」の部分は、「やーさーしーさーにー」と拍の頭で唱えられる為、ここではっきりと「やさしさ」がメッセージとして告げられているのかもしれません。
流行歌を1曲ずつ取り上げて、そのうたのしくみについて話している本書。目次から気になる曲を選んで、読み始めるのもたのしそうです。

 『うたのしくみ 増補完全版』

細馬宏通

2021年 ぴあ