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連載コラム

狂い咲いた桜だけが本当 ような恵のコラム 甘夏ためつすがめつ41こめ

友人から教えてもらった道が気に入ったので、きょうもその道で帰ってきた。

 

こんなに近かったっけと思った。

 

はじめてひとりで歩いたときは、もっと時間がかかったような気がする。

 

狭い階段を登りきったところに、大きなびわの木があった。

わあと立ち止まってしばらく見上げる。

雨上がりだった。

 

胸を打つ花、電燈、看板のあの感じ。

わたしはいちいち「ははあ」と驚嘆しながらずんずん進む。

存外歩いてる人が多い。

 

びわの木の道を曲がらなきゃいけなかったことにやっと気づいて、引き返しながらひとり笑った。はしゃいでいたのだ。

駅が見えたときにはほっとしたくらいだ。

でもすこし、名残り惜しい。

 

ふと、バス停の手前で白髪の老人が道に座り込んでいた。

一気に現実に引き戻された。

 

そばには倒れた自転車、聡明そうな女性が目線を合わせて話をしている。

周りに人が集まってきて、真剣そうな顔を突き合わせて電話をはじめた。

 

できることなんて何も、そんなふうに自分をとがめも慰めもせず、わたしはすぐそばを通りすぎた。その老人は帰るべき道も、家も理由もわからない、さっと耳をすませてそこまで聞いて、わたしは黙って移動する。

 

そんなに移動してどこにいきたいのです。

 

しばらくのあいだ、その後ろ姿が胸のうちから消えないことを知っていた。

 

わたしはそればかりを眺めていた。

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