美しさは怖さ。先日東京国立博物館で幕を閉じた、美術家・内藤礼の展覧会「生まれておいで 生きておいで」を鑑賞いたしました。
何人もの人からこの展覧会について連絡をもらっていて、その注目度はとても大きかったと推測します。そしてわたしは、彼女の作品を見てすっかり怖気づいてしまいました。
どうして怖いと感じたのか。そのヒントになるような言葉が、過去の展覧会図録の中にありました。哲学者の星野太によるテキストで、「ひとたびこの空間に足を踏み入れた鑑賞者は、おのれの認識とは裏腹に、終始作品を通じて“見られてしまう”ことになる」。
例えるならば、彼女が作り上げた空間の中で、光の方向に進むてんとう虫のように、自分自身が誘導されていく感覚。わたしはそれに抗いたくなったのかもしれません。
そんなことをうじうじと考えていたら、演出で照明を落とした展示空間の中で、まぶしいほどのスマートフォンのライトを点けて目録を読もうと頑張っているおじいさんがいるではありませんか!
おじいさんその光、作品にめっちゃ反射してる!!
めちゃくちゃ抗ってる!!!
『内藤礼 うつしあう創造』
2020 HeHe
金沢21世紀美術館 展覧会図録