本の紹介『波の記譜法 環境音楽とはなにか』

 「もしかしたら、その環境には、たった1音だけあればいいのかもしれない」。

本書出版のきっかけは、作曲家・芦川聡が遺した文章をまとめ、彼の模索と共に環境音楽について考えることだったそうです。タイトルの通りに「波の音を記譜をする」としたら、一体どんな音楽になるのでしょうか。

<窓の外の風景をみながらピアノをひく>

<風景の断片、あるいは音の断片を記録する>

<記録された断片を郵便で送る>

 

上記は、同じく作曲家の吉村弘による<ナイン・ポストカード>という楽曲の説明です。芦川聡のレーベルから発表された作品群で、「ほんの一小節の短いフレーズだったので、ポストカードの上にちょうどいい具合におさまる作品になった」と書かれています。友人達に送っては楽しんだという、最少の音のメッセージ。なんて素敵なやり取りでしょう。

『波の記譜法 環境音楽とはなにか』
小川博司 庄野泰子 田中直子 鳥越けい子 編著
1988年2刷 時事通信社