「1980年4月、僕は2度目のロンドンに着いた。ディーン・ストリートという通りのすぐそばに、ソーホー・スクエアという小さな公園があって、その中の一つのベンチが自分用の席であった」。
毎日同じ時刻に同じ場所で通行人を観察し、鉛筆画を描いた大竹伸朗の作品集『倫敦/香港
1980』。ロンドンに続き香港でも同じ手法を用いて、手元に残った4冊の小型ノートと3冊のスケッチブックを編集した一冊です。
わたしは大竹伸朗が「ベンチ」という公共物を「自分用の席」と言っているのがいいな、と思いました。こういう、心の中でひっそり自分で決めていることが好きなんです。あそこは絵を描くために座る席。誰か別の人が座っていたときは、ちぇと思ったのでしょうか。
『倫敦/香港 1980』
大竹伸朗
1986年 用美社