空壺雨をのんでる廃庭 桜那恵のコラム 甘夏ためつすがめつ17こめ

ともこさんが「パーフェクト・デイズ面白かったよ」というので、さっそく近くのレンタルビデオ屋さんに行った。「新作だけど7泊8日」の棚には〜···役所さんが居ない。おや、と思い調べてみると、DVDのリリースは7月で(今日は5月でした)、しゃあない私は「バビロン」と12回目くらいの「ハウルの動く城」を借りて帰る。夜、梅雨が近い風が吹いてる。

 

人はそれを「時代遅れ」だとか「時間のムダ」と言うかもしれない。私も大賛成である。だいいちホントは借りたかった「カポーティ」は貸出中だったし、当店「ゴーストワールド」の取り扱いはありません。今はみんな、スマホなんかで見るんですね。

 

 

 

その帰路で、普段は入らないコンビニに入った。で、ワイン買おって思った。思いがけず。私は酒も煙草もやりません。エートこれは「バビロン」を見ながら愉しもうと思ったからで、パキッと開けるワンカップの白と大好きなポテチを買って、煌々と光る箱から夜に出ると、低い鳥がスっと隣りの家の庇に入った。つばめだ、と思うとすぐにあの鳴き声がここまで届いた。うまれたんだ、と思うと口元がゆるみ、一日働いてくたくたの体に、まったく理論に反した回復が訪れるのを私は見る。

 

この文章は、無駄だったんでしょうか。

 

そんな文学や詩、写真が撮りたくて、私はここのところむかむかとしていた。むかむか、といっても怒りや衝動なんかじゃなく、その逆といってもよかった。つまり私はかなしくて、自分でも驚くほど静かに座っていた。

 

 

私はまあそうねアナクロだが「ぼくの伯父さん」にはとうてい敵いっこない。

 

ルックスや知識の多さよりも「最強なのはセンスがいいってことじゃないかなー?」*とあたしンちのみかんが友人・しみちゃんに言っていて、好きだなあと思った。

よい本は決して古びないのだ。造本もなおよし、である。

 

私は白ワインが好きかもしれないな、とはじめて知った5月でした。 

 

 

 

 

ぼくの伯父さんの東京案内 沼田元氣/2001 求龍堂

 

*あたしンちSUPER 第2巻 #50より