自然を模した庭誰よりも生きてる 桜那恵のコラム 甘夏ためつすがめつ11こめ

夏がきらいなのに、夏の記憶ばかりが美しいのはなぜだろう。

 

夏がきらいです。

私は暑がりだし、それに夏の命はすごく美しいので、春のことなんてすぐに忘れてしまうから。

 

イギリスの夏は短いという。

日本の夏はやたらと長いですよね。

 

束の間の秋に、夜の木場公園を歩いて思ったこと。

冬至に向かう電燈で遊ぶ子どもの声とボールの音。

犬が踏む落ち葉の音と、軽装の女と電話の声。

 

そういえば、家の庭にあったハナミズキの葉が燃えるように色づく秋を、私は好きだった。

 

あの色。

 

どうしてこんな大事なことばかりを忘れてしまうのだろう。

 

「みどりの王国」を読み終わったあと、私はスツールの上でしばらく本を抱きしめていた。

 

さまざまに錯綜した、光ある庭を思い浮かべて。

YONA Megumi

 

みどりの王国

戎康友 鈴木るみこ

2023