夏がきらいなのに、夏の記憶ばかりが美しいのはなぜだろう。
夏がきらいです。
私は暑がりだし、それに夏の命はすごく美しいので、春のことなんてすぐに忘れてしまうから。
イギリスの夏は短いという。
日本の夏はやたらと長いですよね。
束の間の秋に、夜の木場公園を歩いて思ったこと。
冬至に向かう電燈で遊ぶ子どもの声とボールの音。
犬が踏む落ち葉の音と、軽装の女と電話の声。
そういえば、家の庭にあったハナミズキの葉が燃えるように色づく秋を、私は好きだった。
あの色。
どうしてこんな大事なことばかりを忘れてしまうのだろう。
「みどりの王国」を読み終わったあと、私はスツールの上でしばらく本を抱きしめていた。
さまざまに錯綜した、光ある庭を思い浮かべて。
YONA Megumi
戎康友 鈴木るみこ
2023