ホックニー 桜那恵のコラム 甘夏ためつすがめつ7こめ

「どうしてこの作品が、こんなにも有名で、こんなにも多くの評価を得られるんですかね」

 

おそらくは半世紀は経ったであろうポップアートについて、私はバカみたいに真面目に聞いた。

 

 

私はそれが、聞くのにはいくぶん遅すぎていたし、拙劣な質問なんだと分かっていたので、半端ににやついていたんだけれども、目を合わせた店長はくすりとも笑わない。彼は人の真摯について笑わない。

 

「作品自体しかりこれを作品だ、これは僕の作品です、って言いきってしまうところに、何か説明のできない凄さがそこにあるんだよ」

 

長いあいだ、うじうじといじり回していたある問いについて、突破口がすこし、でもその隙間から確実に見えた、と思う瞬間でした。

 

例えば彼の「カメラワークス」。

そうこれは写真作品ではあるけれど、あすこを繋げたり繋げなかったりして、またひとつの作品を生んでいる。

ココにこの写真を持ってこないでこれをコッチに持ってくるんだ、というところには驚いてしまうし、私だったら足がすくんでしまうような見返りのない確信がこの作品にはある。笑ってしまう。笑ってしまってやられた、と思う。

 

この夏にはじまった東京都現代美術館の展覧会、ぜひ暑いうちに行きましょう。ぐらぐらとゆれる青い水面の、プールにも行きましょう。

YONA Megumi

 

 

David Hockney Chris Stephens Andrew Wilson/2017 TATE