「松井冬子展 世界中の子と友達になれる」 &_m

 

 

霊、臓物、死、

グロテスクなものを描いているのに、不思議とこわさはない。

むしろ、やさしく、つつみこまれるような気になる

幻想的な世界だ。

 

現在、横浜美術館で行われている

「松井冬子展 世界中の子と友達になれる」では、

初期の作品から最新の作品に至るまで、

松井冬子の作品を、そのモチーフごとに紹介している。

 

満開の桜が水面に写り、

ぱっくりひらいた入り口からこの世の向こうへと溶けてゆきそうになる作品、

《この疾患を治癒させるために破壊する》。

 

見つめていると群れになった蜂があらわれ、

たちまち女の子の世界がこの世にはないことに気付く、

《世界中の子と友達になれる》。

 

会場にはデッサンや構想図も展示されており、

作品が、丁寧に生み出された世界なのだということが伝わってくる。

 

松井冬子は、自身の作品について、インタビューにおいて

「身代わり」、「厄払い」と語っている※1。

作品が、辺境の世界へと深く切り込むことで、

それをみた人は、

闇の世界をなだめ、生へのエネルギーを得る。

 

不思議とこわさを感じなかったのは、きっと

誰もが奥のほうにひそめている、

妬みや、痛みや、悲しみに、寄り添っているからなのだろう。

 

松井冬子の世界を通り抜けるとき、

日本画のやわらかな質感につつみこまれ、

あたたかな闇のなかで、やさしくなでられるような気がする。

 

3月には映像作品の展示も始まるそう。こちらも気になるところ。

会期は3月18日(日)まで。

 

 

参考

 

※ウェブページのリンクは2012年2月11日現在

 

松井冬子展 世界中の子と友達になれる

http://www.yaf.or.jp/yma/jiu/2011/matsuifuyuko/

 

松井冬子/まついふゆこ/Fuyuko MATSUI

http://matsuifuyuko.com/

 

※1「身代わり」「厄払い」と語っていることについては、

次の2つのインタビュー記事を参照しました。

 

インタビュー「画家 松井冬子さん」 | ヨコハマ・アートナビ

http://www.yaf.or.jp/magazine/2011/11/post-43.php

 

「理性ある狂気」で描く心の風景 松井冬子インタビュー -インタビュー:CINRA.NET

http://www.cinra.net/interview/2011/12/02/000000.php