瀧口修造とマルセル・デュシャン、
二人のやりとりそれ自体が、ひとつの芸術作品のように感じられた。
2012年1月29日まで千葉市美術館にて行われている
「瀧口修造とマルセル・デュシャン」展では、
二人の活動、出会い、交流を、膨大な書簡や書物、作品を通じて丁寧に紹介していた。
瀧口修造は、日本の美術評論家。
著作を通して日本にいち早くシュルレアリスムを紹介し、
また、自身も、言葉や形象による表現を行った。
一方、マルセル・デュシャンは、フランスの芸術家。
男性用便器をはじめ、既製品を美術作品として提示した
「レディ・メイド」と呼ばれる作品がとりわけ広く知られている。
二人は、1958年に瀧口が渡欧した際、
サルヴァドール・ダリの家で、遭遇する。
それ以前にも、瀧口は、著作の中でデュシャンについて触れてはいたが、
出会いの後、それぞれの著作物を交換し合ったり、
瀧口の「オブジェの店」という構想にデュシャンのサインを寄せてもらったり、
瀧口が『マルセル・デュシャン語録』や
岡崎和郎の協力を得てデュシャンの作品の一部を立体化したオブジェを制作したりと、
二人には様々なかたちで関わりが起きている。
二人の交流をみていて、
「甘美な死骸」のことを思い出した。
「甘美な死骸」は、シュルレアリストの間で行われた一種の遊びだ。
数人の人が、それぞれ部分を書き、一つの文章や絵を完成させる。
それぞれの人は、書いているとき他の部分を見ることはできず、
完成したときに初めて全体像が見える、偶然性に満ち満ちている。
意図せぬ出会いによって生じた二人の交流は、
大仰な意義や権力を示すものではなかった。
それは、戯れ、共鳴し合い、ひとつの美を生んでいた。
参考
※ウェブページのリンクは2012年1月18日現在
千葉市美術館
http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2011/1122/1122.html
シュルレアリスム、甘美な死骸について
http://www.sur2011.jp/gaspard_lisa.html
『デュシャンは語る』 筑摩書房、1999
『コレクション滝口修造. 3 (マルセル・デュシャン.詩と美術の周囲.骰子の7の目.寸秒夢)』 みすず書房、1996
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