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連載コラム

プラハの春に挟まれた指 ような恵のコラム 甘夏ためつすがめつ26こめ

その人があそこに立っていた時のあの感じというのが欲しいので*

──舟越桂

 

彼の彫刻が人という器から溢れれば溢れるほど、人間のにおいがするのはなぜだろう。

 

こわい顔をしたスフィンクス、肩から掌が咲く、ひれのようなものを金具で留めた、具象彫刻の線を越えた作品たち。

 

東京都現代美術館ではじめて舟越桂彫刻を見た時「そこにいる」と思った。

 

本の装丁でよく知っている、独特の気配を漂わせる表情の人。

近づくと青っぽいと思った。彩色の色ではない。

たしか『遅い振り子』だったと思う。

その時は楠だと知らなかったけど、よい香りがしたことを覚えている。

 

わかるよ、と思った。

もちろん彫刻は喋らない。

喋らないけど、言葉ではない何かで受け取った気がした。

そして、その瞬間にわからなくなる。

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